【認知症革命】『最後まで、その人らしく』そのためには?【Nスペ感想】

2015-11-16

NHKスペシャル シリーズ認知症革命(全2回)。第一回は見逃しましたが、第二回を拝見しての感想を。

番組のねらい…認知症の人が、今後ますます急増していくと予測される日本で、今私たちは何ができるのでしょうか。
2回シリーズで国内外の最新研究や画期的な取り組みを紹介します。NHKスペシャル シリーズ認知症革命 公式

公式ページで第2回の概要が詳しく書かれています。シリーズ認知症革命 『最後まで、その人らしく』

kakkon.netでも、ざっくりとした概要を記載させていただきます。正確な内容ではないことをご了承ください。

番組のテーマは

『認知症になっても、その人らしく穏やかに生きることができる』

そのためにはどうすれば良いのか?

認知症の患者さん…という言い方をさせていただきますね(番組ではあえて『患者』とは表現していませんでしたね)

今回、この番組で伝えたかったことは、認知症の患者さんにも感情があるのだということ。

感情を外に表現させてあげる

閉じこもっている感情を発露させてあげると、徘徊をしたり、暴力的な症状が治まるというのです。感情を発露=体力があり社交的な人はスポーツを。内向的な人はガーデニングなど…。

物忘れを肯定する

『物忘れはしょうがないこと』と周囲が認識し、認知症当事者が悲しい気持ちをしていることを受け止める。

島根のデイサービスの取り組み
認知症患者でワークグループを行い、司会進行が『午前中に物忘れした人~?(手を挙げてください)』で挙手させて、『ハイ、みなさんお仲間です』とニコニコ。パチパチ拍手。患者さんはホッとして、安らかな顔のように見えました。自分だけではなく、みんな同じ思いを共有しているという意識は大事なことですよね。

認知症の患者さんの手記

軽度だと思いますが、認知症患者さんに根気よくお願いして手記を書いてもらうと、認知症患者さんにも深い感情があることが分かったのだそうです。

認知症患者さんは、病気のせいで物を忘れる。それを家族が見て、とがめる(指摘する)。

すると、患者さんは『とがめる(指摘する)』=『怒られた』と認識するのだそうです。

すると、理不尽に怒られているという気持ちが爆発して、こんな自分ならば居ない方が良いと思った場合は『徘徊』。ムカーーーっときて抑えられなくなったら『暴力をふるう』ようです。

自覚しているからこそ、辛い

65歳の女性…まだ本当に若い方の例も紹介されていました。(私の母と近い年齢でしたので、胸に迫るモノがありました)
この方も手記を書かれて、その中で『私と同じ年の人にはできていることが、私にはできないのか…』といった記述がありました。

認知症の方とはいえ、そんな自覚をされているのですね。私は今回の番組内で一番ビックリしました。

自覚できているのに、病気のせいで物忘れしてしまう・カッとくる衝動は抑えられない。
コレって、とても辛いことじゃないですか。分かっているのに、気付いたらやってしまう。生き地獄じゃないですか。

65歳の女性の旦那さまが、この手記を読まれて、奥様の気持ちを初めて知ること・ハッと思うことがたくさんあったようです。そうすると、接し方を良い方向に変えることが出来るはずですよね。

押し込めた気持ちが不眠につながる

もう一人の例。こちらは76歳の認知症の女性。この方の実娘さんが精神科医のもとに相談に。

母親は、寝て欲しい時間に寝ろと言ってもいうことをきかない。(勝手な時間に寝て?)毎晩、0時をすぎて起きる。

困るのは、大音量で夜中にテレビ見る、家族全員が参る。今夜は大丈夫だろうか…とビクビクする毎日。

娘さんは、毎晩0時に様子を見に行くのが日課。案の定、この日の夜も『下着を7枚も着込んで』暑がっていました。あきれながらも、下着を脱がす娘さん。

娘さんは週6で働きながらもこんな毎日を過ごし、ここ2ヶ月間ロクに寝られていない。母親も安定した睡眠がとれていない。デイサービスでも全く表情がなく、黙り込んでいる。このままでは共倒れです。

そこで、精神科医を通じて母親に手記を書いてもらうと、『私は娘に従っている、言いたいことも言わずガマンしてる』とありました。『確かに、私は母に厳しく指摘している』という意識が娘さんにはあったそうです。

精神科医の先生がおっしゃるには、その不満が不眠につながっている可能性があると。『接し方を変えてはみては?』

接し方を変えろ、と言われましても…と思いませんか?(-_-;) 夜中に大音量でTVをつけられたら、あなただったらどう対応しますか?そう思いながらも、続きを見ますと…

娘さんはその後、母親の物忘れを厳しく指摘するのをやめました。母親が間違ったことを言っても、笑って聞き流す。今まではビシっと正解を言っていたそうですが、それをやめたそうです(私にはできないッ、結構・難しいことですよ!)。

さらに、母親を無理に寝かしつけるのをやめた。途中で見に行く(0時に様子を確認する)のもやめたそうです。

相談して対応を変えてから1カ月半後。母親に変化が…夜中に起きることがない。デイサービスでの表情が明るくなり、口数が増えたそうです。コレは睡眠がキチンととれている証拠です。

受け流すことの大事さ

丹野智文さん(2015年時点 41歳)facebookがゲスト出演されていました。

日本認知症ワーキンググループ メンバー
宮城在住。2人の娘の父。ネッツトヨタ仙台でトップ営業マンとして働いていた39歳の時に認知症と診断。
現在は事務職へ異動し、仕事マニュアルや作業チェックリストを自作するなどの記憶障害を補う工夫をしながら働いている。シリーズ 認知症“わたし”から始まる

丹野さん、ガイヤの夜明け(それでも働き続けたい... ~認知症と仕事...両立できる新時代~)で存じておりました。とても意識の強い方です。仕事で成功していたからこそ、病気の宣告を受け挫折を強く感じたことと思います。けれども、くじけずに現在の活動までされている。なんと素晴らしい方なのでしょうか…

番組には丹野さんもゲスト出演されて、エピソードを語ってくださいました。

丹野さんご自身も、奥様の『物忘れを笑い話にしてくれる対応』に救われるのだそうです。

『忘れたこと、何か失敗したこと』は話していて表情で分かるんです。認知症患者は何で失敗したかは分からないので、理不尽におこられるから『怒りに変わる』のだそうです。

認知症は治らないと周囲が達観すること

「包容力をもって接しろと言っても実際にどうすればいいの?大変じゃないか」と、文枝さんが番組中におっしゃったのかな…

たしかに、大のオトナが子供のように好き勝手を言って、やってしまうのを見守る精神力は並大抵のものではないのではないでしょうか。

番組で伝えていたのは、『治らなくて構わないと思う』ことだそうです。ここまではもう、しょうがないと割り切ること。

今までの自分でいなきゃと思うとつらい。失敗したっていいと思うと不安が少ない。…そこを家族も理解し始めたときに、認知症当事者と家族が一緒に生活できる。サポートする家族にココロの余裕ができると、患者さんの症状が穏やかになるというのです。

認知症でも社会とかかわりを!

手記で多かったのが

  • 家でじっとしているのは切ない
  • 誰かとかかわりたい

認知症になっても社会とつながりたい人がすごく多かったとのこと。でもよく考えれば、これは認知症だろうがなんだろうが、人として当然の感情だと番組で伝えていました。

地域ぐるみで実行している自治体があるそうです…静岡県の富士宮市。
(丹野さんと同様アルツハイマー型認知症で)59歳の若さで認知症と診断されたSさんが、それでも誰かの役に立ちたいと自治体に相談しに行ったそうです。

そこで相談された自治体も、『デイサービスに行ってください、という対応はおかしいだろう』と疑問を感じたそうです。その疑問エライ!!

  1. 認知症患者の方に働く場を提供する。
  2. 孤立させない取り組み『よりあいサロン』一人暮らしでも閉じこもらないよう交流の場を提供。
  3. 認知症患者の方でも参加できる卓球サークル・野球などのスポーツ大会。
  4. 重度の患者さんには見守り活動。薬の管理や買い物のサポート支援。
  5. 地域が認知症患者を把握しているため、徘徊も1時間以内に見つかるそうです!この地域は『徘徊できないんです(笑)』

富士宮市の『認知症サポーター』は、発足からの8年間で35人から1万人に達したそうです。人口13.5万人の富士宮市に対して、この割合はすごいです。

『認知症だからって何もできないわけではない。普通に生きたい。』という気持ちを叶える。

総括

アンケートで『認知症になり外出や交流の機会が減った』…約7割と、認知症の方は不満を感じているそうです。

『認知症の人が普通に生きられる社会が求められる。認知症になったから助けてと言える社会になれば嬉しい』と丹野さん。
できないことをサポートしてもらいながらも、できることは一緒にやってほしい。『サポーターではなく、パートナー。笑顔で普通に生活できるのです』とのことでした。当事者でなければ分からない心境ですよね、なるほど…と思いました。
認知症の方は一方的に介護しなければ、という固定概念が変わりませんか?

『かつて認知症は少数派だったが、今後わたしたちの時代は多数派になる。』
長寿社会の課題ですね。ガンで死ぬか、認知症が進んで老衰で死ぬか…の2択と言ってよい時代。もっと本気で、身近なものとして考えなくてはなりませんよね。

桂文枝さんのコメントがリアルでした

番組冒頭で、司会進行の武内アナウンサーが『認知症の方を受け入れている自治体があります、もう何も心配いらないんです!』といったような内容で、大袈裟な前フリをしました。

もう当たり前であるんですよ、といった言い方に聞こえて、私は思わず『…ンなバカな』と思いました。その後に、聞き手の桂文枝さんがこう言いました。

『…たまたまじゃないの?』

この言葉は台本にあったのでしょうか?
私は、とてもリアルな感想だと思うのです。

介護施設(病院も)の『意識の高さ』は、ピンからキリまであります。私が実際に見て、聞いて思ったことは、『自分が住んでいる地域に心のこもった介護サービス・サポートがあればどれだけ幸いなんだろうか』ということ。

たまたま、手厚いサポートの自治体に住んでいるのならばラッキーですし、そうでなければ急速に痴呆が重度に達して老衰を迎えることになる…と思っておりましたが、今回の富士宮市のSさんのように必要を感じて、一般市民でも制度を立ち上げることもできるのですね。

認知症は誰もが行く道、と言ってよいのではないでしょうか?『私もいずれお世話してもらいたいから、お世話するのはお互い様だよ』と言った気持ちで、私も参加したい。これはもっと広まってほしい活動ですね。

余談ですが…管理人の祖母は以前からの認知症と腎不全が進み、2015年3月に永眠しました。昨年の今頃は、長期入院中でひどい錯乱を抑えるために薬を投与されて、妊娠中の私が会える状態ではありませんでした。祖母の冥福を祈ります。
NHK 認知症キャンペーン

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